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そんな折り、携帯が鳴り出した。
けれど到底取る気になれず、そのまま放置しておく。
しかし、携帯はしつこいほど鳴り続けた。さすがにうるさくなり観念して手に取る。
「…誰だ?コレ」
ディスプレイには名前が表示されず、番号だけが点滅していた。なんとなく見覚えがあるような、無いような番号だ。
「もしもし?誰?」
問い掛けると、女の声が返事を返してくる。
その声に、俺は素直に驚いた。
幾ばくかの会話を交わし、俺は電話を閉じた。そして立ち上がる。
傍らに放っぽり出したままのコートを羽織り、鞄を拾い上げて部屋を飛び出した。
外は相変わらず雪が降っていて、身を切るように寒く足元も悪かった。
にもかかわらず俺の足取りは速く、全力で疾走した。
ただ、切れたままだったミルクを買うために。
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