step,0:空っぽの部屋

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奇妙な感覚があった。 想像に難いが、まるで、自分が産まれたばかりの様な感覚が。 それを抱きながら、男はぼんやりと部屋を見渡す。 「…」 白い、苦痛を感じる程に真白い壁が男を包んでいる。 床や天井までもが白く、陰影の乏しい中では距離感がまるで掴めない。 「…」 灰色をした、僅かに隆起した何かを眼に留めたのはすぐだった。 目的も無いままふらふらとそれに近付くと、それからノブの様な物が伸びているのが解る。 「…とりあえず…」 誰とも無く小さく呟き、男はドアノブを握った。
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