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少年はこの森へ来た経緯、『鍵』のこと、塔は見えているのに、一向に近付けないという奇妙な体験をしたことなどを愚痴混じりに話した。
『なるほど、あなたは『鍵』を求めるものでしたか。』
長老は聞き終わった時、目を閉じそう言った。
『ここら一帯には結界が張ってあるのですじゃ。
悪しき者が入って来られぬよう。
そして…塔を登るに値する人物かどうか、確かめるよう…』
『塔に登るに値するか?…
…!… もしかして、『鍵』はここにあるのか!!』
長老はは頷いた。
『あなたはあの結界を自力で抜けられた。塔に登る資格を得られたのです。』
『塔に登る資格? 『鍵』じゃなくて?』
少年は疑問を口にした。
『さよう。
私もかつては塔の頂を目指した身。
けれど、神は『鍵』をお渡しにならなかったのですじゃ。』
『それってさ…本当にあるの?』
長老はカッと目を開いた。
『もちろんです! ちゃんとこの里の文献にも残っているのです!』
『わ、わかったから顔下げて…』
下から、ねめあげるようにして見てくる長老の顔は、異様な気迫に包まれ、不気味だ。
長老は元の位置に座り直すと、神妙な顔付きで続けた。
『この里にいるものは皆、一度は『鍵』を求めた者達じゃ。
わしのように、塔の頂を目指すが『鍵』を得られなかった者。
この里にすらたどり着けず、行き倒れた所を救われた者などな。』
『ふーん。』
『さて、あなたは『鍵』を求めておられる。
聞くまでもないとは思うが、お聞きする。
あなたは、この塔の頂を目指されるのかの?』
『もちろん『鍵』があるなら、目指すだけだ!!』
少年は力強く答えた。
『…わかりました……
では、来客用の空き家がありますので、そちらで今からお休みくだされ。
早朝、迎えの者がお迎えに上がりますのでの。』
少年は頷くと、体が疲れていたのもあり、何故早朝なのか?など深く考えず、案内された家で休んだのだった。
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