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その後、早朝というより真夜中といった方が正しい時間に叩き起こされ、今にいたる…
起こされた直後当然、
『何でこんな朝早く起きなきゃ行けないんだ!!』
と怒鳴ったが、
『儀式ですので…』
と返されそれっきり、何を言っても沈黙を貫かれている。
と、そこまで考えた時だった。
「ぶっ…」
少年は前を歩いていた僧服の男に顔面をぶつけた。
いつの間にか頂きについていたのだ。
階段はもう存在せず、眼前に広がるのは平な床と、白い霧。
「ここがてっぺん…」
相変わらずの霧によって何があるのかまったく分からない。
僧服の男達はというと、何かを待つかのように、じっと立っている。
やがて、一番鶏の鳴く声が聞こえ、白い霧がゆっくりと黄金色に染まっていった。
夜が開けたのだ。
ゴーッという音と共に少年の髪の毛が巻き上げられた。
その風は黄金色の霧をも巻き上げ、吹き払っていく。
太陽に照らされた大地が温まり、上昇気流が巻き起こったのだ。
ただ、黄金色の霧は吹き払われるがままにはならなかった。
意思を持つかのように、一ヶ所に集まりだしたのだ。
それはグルグルと渦を巻き、ギュッと圧縮されたかと思うと、フッと消え去った。
…一枚の扉を残して…
上部が弧を描くような造りのその扉は白く、取っ手は金で出来ている。
少年は引き寄せられるかのように歩み寄ると、取っ手に手を伸ばした。
カチャッ…
捻ると軽い音を立て、扉は簡単に開いた。
そしてまず目に入ったのは『鍵』…ではなく、こちらに背を向けて座る少女の姿だった。
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