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「「 わああぁああ!!」」
突然どっと歓声が上がった。
アレクが「何だ何だ?」と振り返ると、それまで沈黙を貫いていた僧服の男達が、手を叩き、拳を突き上げ、抱擁を交わし、喜びを体一杯に表現していたのだった。
「神はようやく我等の手に『鍵』をお預けなさった。
今日は宴会じゃあ!!」
「これで今までの、我等の思いが報われる。
アレク様、魔王を必ずや封じて下さい!」
「だああぁあ!頭に触るな!頭に!!」
男達に頭をグリグリなでられ、アレクはわめいた。
自分ではそれなりの冒険者のつもりなのに、子ども扱いされるのが、嫌なのだ。
ノエルの方は、というと、彼女自身が『鍵』という事もあり、どう扱っていいのか分からないのだろう、男達は気にしている風はあるものの、近付く者はいなかった。
と、彼女がしゃがんだのが目に入った。
何か拾ったようだ。手に四角く、白い物を持っている。
(あれ?)
パラパラとめくっているところを見ると、本か何かのようだ。
(んなもん、落ちてたっけ?)
いくら床と同形色だったからといえ、落ちてたなら、気付くと思うのだが…。
「さあ、早く下で待っている里の者に、この事を伝えてやろう!」
その言葉に、アレクは考えを中断させた。
今だ興奮が収まらない者にバンバンと背中を叩かれ、階段を踏み外しそうになる。
「叩くな!落ちるだろうが!!」
途中、アレクは階段を降りながら上を仰ぎ見た。
霧はすっかり引いて、てっぺんがよく見える。
何故、そして何時からあの本が落ちていたのか…
暫し物思いに耽ったアレクだったが、頭を振ると考えるのを止めた。
それはいつの間にか扉が消えていることや、青い光が止んでいることに説明が出来ないように、考えても無駄なのだ。
ここは結界が施された地。
しかも、『鍵』が守られていたのだから…。
「アレク様~!お早く!!」
立ち止まっている間に追い抜いていった者が呼んでいる。その顔に広がる満面の笑み。
アレクは返事を返すと、再び足を降ろし始めた。
こうして一同は、喜びに浮足立ちながら、誓いの塔を後にしたのだった。
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