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まぁ、旅をはじめれた時にでも聞けば良いのだが…
それに、気になることはもう一つある。
『鍵』の事だ。
伝承で、『鍵』と語られるからには、鍵の形状をしたものが手に入るのだと思っていたのだが、実際は人。しかも、少女だ。伝承としてその存在を残すなら、『巫女』でも良かった筈だ。
「おいおい分かること…なのか?」
里長や里の者に聞いてはみたが、誰も分からないと言う。
どうやら、伝承に縁ある地や書物等を調べ直した方が良さそうだ。
「はあ~っ」
溜め息を吐くとアレクはむくっと起き上がった。
「散歩にでも行ってくっか」
そのまま先程よりも、明るくなった外へと布をめくり、出ていく。
それから数刻後。
「アレク、ご飯出来た…って…」
ノエルは木のお椀を持ち、アレクが泊まっている客家へとやって来ていた。この里では、食事は雨の日以外里共有の台所で作られ振る舞われる。
霧が立ち込めやすく、作物が多く収穫出来ないからだ。
そこで、一緒に朝ごはんを貰いに行こうとやって来たのだが。
何処にもいないアレクにノエルは焦った。
「アレク…何処?」
慌てて長老の家へと走って行く。
「ノエル様、どうされ…」
血相を変えて戻ってきたノエルに長老は尋ねたが、まるで聞こえていないノエルは言い終わるまでには再び家を飛び出していた。
「いったいどうされたのか…」
長老はノエルが出ていった方を見て「ふむ」と首を傾げる。ふと目線を家の中に向けると、床に空の木のお椀が置かれていた。
机がないので、それは別段おかしい事ではないのだが。
そこには、ノエルが持っていた白い本があったような…
「まぁ、すぐ帰ってきなさるだろう」
長老は自分の分のお椀を持つと、食事を取りにゆっくりと歩きだした。
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