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「やっぱ、朝の散歩は気持ちいいなぁ」
アレクは日の光の方に顔を向け、気持ち良さそうに目を細めた。
いつの間にか鳥達もさえずり始めており、人通りは無いものの、森は賑やかだ。こないだは結界が作り出す空間に捕われていた為、生き物の気配が無かったが、今は姿こそ見えないが、気配を感じることができる。
「お、川がある」
淵に屈んで顔を洗い、ついでに水をすくって飲む。
それで胃が動き出したのか、腹の虫がグーッと鳴った。同時に空腹感に見舞われる。
「…そろそろ戻るか」
アレクは川に背を向け、帰路につきはじめる。
その時だった。
「アレク~!」
ノエルが向こうから走ってきたのだ。
「ノエル!?」
目の前で、膝に手を付き、ハァハァ…と息を調えるノエルにアレクは驚いた。
「どうやって、ここに?
道、無かっただろ?」
隠れ里は他の村や街と繋がりがない。あまり里から離れることが無いため、道は無かった。
ふと膝に置かれた手との間に、あの白い本が挟まれているのが目にとまった。
「これで追って来たの」
ようやく息を調えたノエルは顔を上げ、白い本をパラパラとめくった。
「『鍵』が所有者と離れ離れにならないように。
ほら、ここにアレクと私の位置が描かれてるの」
「………」
アレクは沈黙した。
ここ、と示された場所には何も描かれていなかったからだ。
真っ白なページがあるのみ。
「何も描かれてないぞ?」
「え?」
ノエルは本とアレクを見比べた。
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