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朝日が昇らない薄暗い時刻。
白い霧をその身にまとい、空に向かってそびえ建つ白い巨塔。
その外壁にぐるりと巻き付いた螺旋階段を、白い僧服に身を包んだ一団がゆっくりと登っていくのが見える。
『ふわぁっ…』
そんな一団の中心。
(周りより背が低いため、遠目には居るのが分からなかったが)少年は大きなあくびを1つすると、拳を突き上げぐ~っと伸びをした。
その動きに合わせ、銀の髪がサラサラと揺れる。
伸びをした際につむった瞳を開けば、それは晴れた日の空のように澄んだ水色だ。
少年アレクは、涙の滲んだ目をしばたたかせると退屈そうにこすった。
なんだか、周りの雰囲気に比べ、あまりにも場違いだ。
しかし、僧服の集団はそんな彼を気にする風でも、いさめる風でもなく、厳(いか)めしい顔つきで前を見据えたまま、黙々と歩いていく。
「なあ、いつになったらてっぺんにつくんだ?」
アレクは尋ねた。
「………」
いくら待っても返事はない。
アレクは唇を尖らせ、頭の後ろで手を組むと上を見上げた。
「つまんねぇの……」
眼前に広がるのは霧ばかり、他に何があるわけでもない。
改めて「つまらない」とアレクは思った。
だいたい、自分達が歩く1・2m先しか見通せないのだ。
どこまで進んだのか、後どれくらいで着くのか、全く分からない。
「俺はただ『鍵』が欲しいだけなのに…」
ポツリとつぶやいたその言葉は霧に吸い込まれていった。
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