白い塔

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“これを語り継ぐ者よ  そしてこれを聞きし者よ  我は悪しき者を    この地に封じた  しかし 封印はいつか解ける  世界は再び闇に    包まれるであろう  けれども恐るる無かれ  我は彼の者を封じる力を    この地に残そう”   それは伝承、古い古い昔話。 俺達が暮らす現代よりも何世紀も昔、この世界には神々が住まっていた。 という所から始まる。   その頃は草木が生い茂り、飢えることなく過ごせるこの世界は楽園だった。 神々は全ての生き物を愛したが、中でも姿形が似ている人をこよなく愛し、共に暮らした。 幸せな日々。しかし、黄金時代とも呼ばれるその時は終りを向かえる。 魔界から現れた1匹の悪魔によって。 彼は美しい楽園を壊し、争いの絶えない世界に君臨することを望んだ。   彼の力の源は醜い心。 彼は神々に見付からぬよう密やかに、しかし素早く生物の心の弱味に漬け込み力を増していった。   神々が気付いた頃には、彼は魔王へと変化をとげていた。 神々は愛するこの世界を守るため、全力で戦った。けれども、彼は魔界から仲間を呼び寄せ、互角に渡り合った。   聖戦と呼ばれるこの戦いは長期に渡った。 結果神々は疲弊し、彼を倒すことは出来なかったが、封じることに成功した。 でも、封印はいずれか解ける。 神は己の力の一部を『鍵』に込めると、それを人知れぬ場所へと隠した。   伝承で語られているのはここまでだ。 そして500年前、封印が解け魔王が再び世界に姿を現したとき、人々は必死に『鍵』を探し求めた。 ところが、どこに封印されたのかその地は不明。 いまだに見付かっていない。
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