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魔王を封じるのに必要な力なら、どこに隠したかぐらい、伝承に残しといてくれたっていいのに。
アレクはムスッとしながら考えた。
おかげで世界各地を旅する羽目になったのだ。
まぁ、『鍵』はどうやらこの塔にあるらしいが…見付けたのは全くの偶然だった。
何故ならここは人知れぬ未踏の地。
ここと塔のふもとにある里は地図に載っていない。
森も含め、この辺り一体に1年中霧が立ち込めているせいだ。
『『鍵』ねぇ…何か見付かるとしたらあの森ぐらいしかないだろうな…』
少年が旅を始めて2年。世界各地をめぐり、やっと得られた『鍵』についてのもっともらしい情報。
それは旅人の為に、自らも旅をしている商人から得た情報だった。
彼等はへんぴな場所にいることが多い。
『鍵』を求めて旅する人がそこそこいるからこその商売ではあるが、おかげで街よりも『鍵』について情報を持っていたりする。
とはいえ、今まではデマやあそこには無かったという情報ばかりだったが…
『あそこは1年中霧が立ち込めてるから、何があるのか誰も知らないんだ。
調べようと何人もあそこへ入って行ったが、帰って来たものはいない。
霧で迷って出られなくなったか、魔物にでも襲われたか…』
その男はそこで言葉を切ると、くわばらくわばらと頭を振った。
『『鍵』を求める者に行くな、とは言わないが、行くなら覚悟しておけよ…。』
アレクは黙って頷いた。
『……てなワケで!
入りような物はあるか!?』
それまでの雰囲気一転、男は商人の顔に戻りニカッと笑った。
それから一週間後、アレクは森へとやって来ていた。
地図を見れば、かなり広大な森がある事になっている。
『『鍵』見付かるといいな』
アレクはそう呟くと躊躇う事なく濃い霧の中へ一歩踏み出していった。
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