井戸ノ底【前編】

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「で…どこへ行くんだ?」 「古井戸だよ、三笠トンネルの辺りにあるだろ?」 俺は拓也の質問に答え、ナビで現在の位置を確認した。 もうすぐ目的地に着きそうだ。   どこへ行くのか決めるのは大抵いつも俺だった。知り合いやネットで情報を集め、身近なスポットだけ周っていた。   「ねーねー、その古井戸にはどんな話があるの?」   「それ俺も思った!翔太、どんな話があるんだ?」   二人は期待のまなざしでコチラを見ているけど…実際たいした話じゃなかった。   「…その古井戸に石を投げると中から「いてっ!」って聞こえるんだってさ。」     「………………え?」   「そ、それだけなのか?」   ホラ、言わんこっちゃない。予想通りの反応だ…   「仕方ないだろ?周りすぎて身近なスポットはそろそろ尽きてきたし…こんなネタぐらいでしか見つからないんだよ。」   「まぁ…そうよね、だいぶ周ったもんね。」   「たしかに、ま…古井戸なんだし…もう暗いし、雰囲気ぐらいはあるだろ♪」     など話している間に、俺達は目的地に到着した。
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