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夕景エモーション
突き刺す夕景の色に
泣き出す君はいつも
何かを壊したがった
色褪せた一枚のスライド
落ちた光のその先で
君は哀しそうに笑った
振り返る景色に期待をしていた
何処かで君が待っている気がして
握る手のいない僕の左手は
茜空を壊す
サヨナラがただ怖かった
手を振る影が離れていく
思い出すたびに消えていく
その輝きさえ切なさに
何かが壊れていく瞬間を
君が僕に見せたがるように
僕は君と笑いたかった
君は何かを言いかけて
僕の顔を見ては止めた
夕景に呑まれていくように
君はずっと黙ったままで
優しさだけを酷く嫌った
僕はそれさえ解らないまま
痛みだけを与えた
サヨナラと言うしかなかった
君につられて泣きそうだった
泣いている君の姿に
敵うはずもなかったんだ
不意に止んだ蝉時雨
世界から音は消えて
二人分の影が残った
何もかもが一瞬で
溶け落ちていくような
秘密の夕景エモーション
サヨナラがただ怖かった
手を振る影が離れていく
思い出すたびに消えていく
その輝きさえ切なさに
誰もいない夕景の中で
切なさだけが疾走していく
胸を刺す夕景エモーション
君がくれた痛みです
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