第一話

8/14
前へ
/41ページ
次へ
置き去りにされ、まだ4月の寒い時期の廊下はとても冷たく、靴下越しでもそれは感じられた。 もうダメだと思った矢先、一人の怪しい人物がそこを通りかかったのである。そう、黒子だ。 「あ…あの~此処の従業員さんですか?」 恐る恐る声を掛けてみると、黒装束の人物は「はいそうですよ」と答えてくれた。事情を説明すると、黒子は客間まで案内してくれた。 「あぁ、珊君ですか案内したの」 「はい」 「いやはや、相変わらずですねあの子も」 「助かりました。あのまま一人取り残されるとこでした。所で貴方のお名前は…」 「私ですか?黒子と申します。此処の裏方の仕事を任されてるしがない一般人です」 「あぁそうなのですか!助けて頂きありがとうございます」 「いえいえ、ではまた後ほど」 黒子はそう告げると足早に部屋から出ていき、攸の部屋へと向かった。 「どうだった黒子よ」 部屋では攸が煙草を吸いながら待っていた。 「今のところ怪しい動きはないですね」 「そうか、では引き続きあの者の監視を頼む」 「了解しました」 そんな内容の会話を二人がしていた頃、客間では怪しい動きをしている者がそこにいた。 「さて、そろそろ連絡を」 客はおもむろに携帯を取り出すと誰かに電話をかけ始める。 「もしもし潜入成功しました」 「よし、よくやった。そのまま客を装えよ」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加