第一章 二人の僕

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 癌も同じだ。どんなに品行方正で、体が丈夫な人でも癌になる。人は癌に勝つためにあらゆる手段を講じる。それでも人は死んでいく。これは絶対的真理だ。人は死ぬ。それを知った後では、すべてのことは無意味に思える。すべてが小さく思えるのだ。   どういうわけか僕はまだ生きている。その理由はただ想像するしかない。僕はもともと体が頑丈だし、職業柄、分が悪い賭けや大きな障害といかにして戦うかを学んできている。これは闘病生活において明らかにプラスになったが、決定的要素でないことは確かだ。今、僕は感じている。僕が生き残ったのは、まったくの幸運にすぎないのではないかと。
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