第一章 二人の僕

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 16歳のとき、僕は招かれて、ダラスのクーパー・クリニックというところで検査を受けた。クーパー・クリニックは有名な研究所で、エアロビクス革命誕生の地でもある。クリニックの医師は僕の最大酸素有効量を測定した。これは体内への酸素摂取量および利用可能量を測定するもので、僕の結果はこれまでクリニックで測定した中で一番高い、と言われた。また僕は、普通の人より乳酸の排出量が少なかった。乳酸は強度に疲労したときに発生する化学物質で、息切れや足の痛みをひきおこす。  もともと僕は、普通の人よりずっと肉体的ストレスに強いし、疲労もしにくい。おそらくこのことが僕が生きる助けになったのではないかと思う。つまり僕は幸運にして、生まれながらに平均以上の呼吸能力に恵まれていたということだ。しかしそれでも、僕は病気であった時期のほとんどを絶望的な先の見えない霧の中で過ごしていた。 病気は僕という人間を屈辱的なまでに素っ裸にし、僕は容赦のない目で自分の人生を振り返ることを余儀なくされた。いくつものことが後悔とともに思い出された。卑怯なふるまい、未完成の仕事、自分の弱さなど。僕は自分に問いかけた。「もし生き残れるとしたら、いったいどんな人間になりたいのか」僕は人間として、もっともっと成長しなければならないことに気がついた。
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