流星群

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くしゃくしゃにされた紙。 呪われた数値。 臓器という臓器が、壊れかけていることを示している残酷なだけの真実。 ぼろぼろと涙が溢れた。 「こんなのって、ない…!」 腎機能、ほぼ壊滅。 血沈、六十。 炎症を示す値は、もはや異常値。 人工透析にも踏み切らなければいけない。 薬による免疫力の低下、粘膜の腐食のような症状、下痢と嘔吐続きで食べ物も受けつけられない状態にまでなってしまった。 吐き通しの自分の顔は鬱血しているらしく、両親がいつになく不安そうな声で医者に何だか質問していた。 私は、そんな会話なんて耳にも入ってこなかった。 脳が押し潰されるような頭痛に、微かに指先が戦慄く。 「何でよ、もう…!」 男に発病しやすい難病だったから、発見も遅れた。 とんちんかんな診断ばかりされて病院を盥回しにされ、ここに来た時にはもう目も見えなくなっていて。 それでも学校に通い続け、終いにはぶっ倒れた。 病気の原因も治療法も確立していない。 しかも、絶対安静にしていなければいけなかったのに無理をしたせいで。 ベッドの柵を握り締める手が、ぬるりと湿気を帯びて気持ち悪い。 担任の冷たい顔が、今頃になって憎い。 検査に行くと言って早退した、あの日。 吐きかけられた、『嘘つき』という言葉。 疲れた、怠い、頭痛がする―――――――― それが、私の身体からの最終警告だったのに。 「あいつらの、せいで…!」 大学を受けるためには評定が必要だ。 多量の欠席も、許されない。 授業を休めば、平常点が引かれる。 だから、無理を押して学校にだけは通った。 身体の限界なんてとっくに通り越した状態で。 身体を大事にすることより、まず内申を稼ぐことに躍起になった。 大学受験というものが、病より怖い化け物だった。 この薬と検査漬けの日々が始まる、その日までは。 「頑張れば何とかなるとか思ってるくせに!どうせ私が死んだって何も困らないくせに!犠牲になった私だけ、苦しんで…!」 世の中平等なんかじゃ絶対ない。 不公平が、当たり前のようにありふれる中。 「こんな馬鹿なことってある…?病気の引き金が疲労とストレスだって。馬鹿馬鹿しい」 自嘲の声音に、やり場のない虚しさを込めて吐き出すことしかできない。 「何でよ…何で可哀相って言うの!?目が見えない、治療方もない…だから、可哀相なの!?」
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