流星群

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頑張って、今を生きてるのに。 一瞬が過ぎる度、死んでいないことに安堵しているのに。 「どうして…!死にたくて部活やってたんじゃないよ、死にたくて勉強してたんじゃないよ!」 溢れるのは、生への渇望。 皆が当たり前のように疑いもなく来る明日が、明後日が、一週間後が…何の躊躇いもなく信じられることが。 ただ羨ましくて羨ましくて羨ましくて。 届かないと分かりきっているのに、手を伸ばして…絶望という名の泥沼に溺れる。 「なら私は、何のために、頑張って来たの…!」 返る答えもない慟哭は、喉奥から胸を砕くように。 涙さえ、私の存在をとどめてはくれない。 切り揃えたばかりの爪にシーツが引っ掛かり、乱暴に振り払う。 引き攣れた声が、喉を焼き。 眦から頬に、首筋に、熱くて冷たい線が弧を描いて散る。 カタカタと、空調の音が嗚咽に紛れて消えていった。 水鏡の水面が揺らいで、はっと現実に引き戻される。 だが、誰も…暫く言葉を発することはなかった。 耳に痛いほどの静寂が、声に鍵をかけてしまったかのようだ。 「……」 会いたい。 理屈も言い訳も飛び越えて、ただ会いたい。 会って何をするつもりかと聞かれたら、返事に窮してしまいそうだ。 それでも…痛切に、会いたいと思う。 「俺、やっぱ明日行くわ」 気づけば、口がそんなことを言っていた。 これには、自分の方がびっくりしてしまった。 二人と一瞬だけ視線が交錯し、いたたまれなくて踵を返す。 死神も、何故だかくっついてきた。 珍しい。 いつもなら余計な一言でも浴びせかけてくるのに。 後ろ手にドアを閉めようとしたその時、か細い声が蝶番に挟まれる。 「ごめん…頑張れなんて、言って、ごめんね…」 失ってから、気づくものが多すぎる。 俺が、人間をやめた理由は…これかもしれなかった。
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