流星群

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ぶっちゃけた話半信半疑。 結構捨鉢な気分だ。 死ぬならとっとと死にやがれ、とか。 かなり『危ない思考回路錯綜中』が頭の中をぐるぐる巡っていたりする。 ぱた、と起き上がって看護師の見回りが行ってしまったのを確認する。 時間が分かるように蓋を外した時計の針をなぞる。 四時…五時半を過ぎたところだろうか。 前は時間を叫んでくれる時計があったのだが、音量調節が出来なくてうるさかったため普通の目覚まし時計にした。 「窓の鍵どこだー鍵!」 白杖もそっちのけで、壁づたいに窓を手探りで開く。 窓から乗りだそうとする身体を押し返すように、氷柱を溶かしたような風が髪を煽った。 「寒ーいな……え?」 何が起こっているのか理解しかねて、思わず目をぐしぐしとこする。 ぼんやりと月明りに浮かぶ、建物の陰影が。 視界に拡散しているだけだった弦月が。 今焦点を結んで、感覚として、脳に届いている。 「嘘…見えて…る…?」 手のひらに視線を落として、何年ぶりかの手相が目に飛び込んできた。 しっかり太い生命線が刻まれているのを認めて、苦笑が漏れる。 手相占いはやっぱりそんなに当たるものでもないらしい。 大体、今視界が唐突に開けたということは。 あと残された時間が幾許もないことを、示唆していた。 あの死神とやらの力なくして、私の視力は戻らなかっただろう。 何故かと言われれば、もう私の視神経も網膜も、既に壊されてしまっているから。 天地がひっくり返ったって、万に一つも自然治癒なんてあり得ない。 死期の歪みと引き替えに、この視界がある。 そう…死神の言っていたことは理論的なようでいて、何だか成立っていない気もする。 「ちゃんと見えてます?不具合はないですか?」 何の前触れもなくかけられた声に、心臓が止まるかと思った。 「っ…ちょっと!驚かさないで…?」 振り向いて、固まった。 固まらざるをえなかった、という方が正しい。 思わず写真立てに入れてある写真と見比べてしまう。 記憶にあるものより、低い声、高くなった背丈。 でもベタ塗りしたような黒色の癖っ毛、ハーフかと思うくらいはっきりとした目鼻立ち。 酷似、していた。 「…人違いだったら大っ変申し訳ないんだけど、もしかして…龍?」 ぱちぱち、と驚いたように目を瞬いた男の仕草に、疑念から確信へと天秤が傾ぐ。 「あー良かった!忘れられたわけじゃなかったんだ!」 間違いない!
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