流星群

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「っ何があー良かった!だよ!何も良くないよ!つか何てカッコしてんの!思いっきり死神のコスプレじゃない!」 どう見たって死神だ。 黒装束に大鎌携えて、これが龍の顔じゃなくて骸骨だったらモロに死神だ。 「かくかくしかじかの事情で死神に…」 ぶっちん、とどこかが切れた気がした。 「あのねえ!死んでまで死神になってどーすんのよこのトンマ!間抜け!ビンボークジ引き男っ!」 何でだ。 自分で自分の心が理解出来ない。 どうして、どこぞの乙女よろしく心臓暴走させて、顔真っ赤にして。 こんな奴が、いとも簡単に自分を狂わせる。 「折角の再開なのに、やっぱり怒るんじゃないか…」 「当たり前でしょ!?」 何が折角の再開だ。 やっぱり、なんて言うから。 死んだという事実を、突きつけられる。 死神が、空想の産物ではなかったことを、思い知らされる。 「会えたのは嬉しいけど!死神になったあんたに会いたかったわけじゃないんだからね!?」 一気にまくし立てて、ぜいぜいと嫌な音をたてる喉を鷲掴んだ。 そういえば。 死ぬ時間は聞いた気がするが、死因は聞いていない。 窒息死だったらどうしよう、とかぶっ飛んだ考えがふと浮かぶ。 「…流れ星見たくて視力戻したんだろ。空、見てれば」 がくっと肩から力が抜けた。 「話逸らすの、下手くそすぎ」 昔から…変わらないらしい。 この変な不器用さ。 す、と視線を上げれば。 リン、と涼やかな音が聞こえそうなほどの火影の線が、空を駆け抜けていく。 「あ、ほんとだ…流れてる」 一つ。 また一つ。 何だか手を伸ばしたら届きそうで。 本当は遠すぎる静止した星達を手のひらにのせる。 「後数十分で死ぬって分かってて…怖くないのか」 直球で訊いてくる。 別に遠回しに言われたって同じことだけれど、もう少しオブラートに包んだ言い方はないのか。 「…怖くないって言ったら嘘になる。でも、意外に肝座っちゃうもんかも。実感ないだけかもしれないけどね」 死にたいわけではないけれど、いざこうなってみれば案外あっけないものだ。 例え死ぬ時に七転八倒するような痛みがあったとしても、それはそれで恐怖を感じている暇はないだろう。 後数千回の鼓動を、聞くだけだ。 「横になったらどうだ」 いつの間にか傍らに並んでいた黒装束が喋る。 「何でよ」 「顔色悪い。さっきから溜息ばっかついてるし。実は結構怠いんだろ」
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