流星群

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ただ漆色だった空に、深い群青色が混じっていることに気づいた。 潰れるような頭痛が、最期を知らせているように思えた。 「もうすぐ、夜が明ける」 「分かってる」 流れ星が幾筋も、駆け抜けていく。 途切れることなく、それは数を増して。 「流星群って凄いね…雨みたいに星が降るってお父さん言ってたけど、本当に…」 腕を捲れば、新たな内出血が斑点を広げていた。 もう、駄目だ。 薬が、効いていない証拠。 「そう、私八月生まれで、獅子座で…」 「弟が乙女座だって話だろ。もう耳タコになるくらい聞ーた」 「あれ…言ったっけ…忘れちゃった…」 こんな時なのに、微かにでも笑っていられる自分に驚く。 死ぬ時は、もっと怖がったり泣き叫んだりするんだろうと思っていたから。 「何かね…流れ星みたいな人生だったんだ…何でもかんでも頑張って、時間が経つの…早かった…」 流れ星は、一つ流れると一人の人が死んだという印と昔は言われていたらしい。 どこの国の話なのかは、覚えていないけど。 最期に流れ星になって、世界を翔けることができたら。 そのまま燃え尽きるのも、本望かもしれない。 「俺よりは、長く生きただろ」 うん。そうだね。 「うん、でも…人生、長さじゃないよ…多分」 悟っちゃったような事口では言ってるけど、本当はどうなのか分からない。 死という一線を踏み越えた龍と、死んだらそのまま土くれに還る私じゃ、どう足掻いたって同じ土俵には立てないのだ。 「どうして、視力を戻してなんて願い事にしたんだ?」 ああ、そういえば。 理由らしい理由は言っていなかったかもしれない。 「生まれ月の流星群を最期に、見たかったんだ…一人で死ぬなら、その方が…寂しくないと思った…」
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