流星群

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ねえ、そんな目しないで。 今は、独りじゃない。 龍がいてくれるから、本当に嬉しいんだよ。 どうしてだろう。 そんな素直な言葉は、私の口からは死んでも出ない。 そう。 死んでも、出ない。 「…一つだけ、訊いてもいいか」 二つ目だよ?とか屁理屈だよね。 「な、に…?」 声が掠れて、うまく伝わったのかどうか。 全身が痛くて悲鳴を上げている。 でも、これくらいは。 答えたい。 応えたい。 「この人生は、幸せだったか…?」 龍らしい、聞き方だ。 最期に、あんたに会えたから。 これが幻覚だったとしても。 「未練は…あるけど…」 流れ星の一つを、脳裏に焼きつけて。 全ての光を閉め出す。 馴染んだ暗黒が帰ってきて、頬から首筋へと、何かが流れた。 好きだって、言えなかったこと。 今言ったら、あんたが苦しむと思うから、言わないよ。 ずっと、片思いのやわらかい卵を…温めてた。 あんたが、死んでからも。 そのちっぽけな気持ち、このまま私だけのものにして…持っていく。 誰にも、壊されないように。 誰にも、汚させないように。 だから、あんたには。 その写真立て、遺してくよ。 校外学習の時の、友達としてのツーショット。 「幸せ、だったよ―――――――――――」 赤くて白い朝日が、瞼を通して伝わってくる。 痛みがふと、やわらいで。 昏昏とした永遠に、溶けていった。
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