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「お前、今いかがわしいこと想像しただろ」 蒼馬が静馬にちらと目をやり、小声で言った。 「いかがわしいって何だよ。それにお前も同じこと考えたろ」 足をゆるめたふたりは、前を行く悠姫の姿を、頭から爪先まで眺め遣った。 すらりと伸びた手足と、制服の上からでもわかる体の曲線。 半分アメリカ人の血が入っているせいか、悠姫は同じ年頃の女子たちにくらべ、体の成長が早かった。 上から下まで棒のように細い同級生も多い中、そのスタイルのよさは際立っている。 悠姫本人にまったく自覚はないが、学校の男たちが、道行く男たちが、どんな目で悠姫を見ているか双子たちはよくわかっていた。 自分たちとてそれは同じと知りつつ、腹立たしかった。 悠姫に自覚がないぶん、心配もしなければならない。 蒼馬も静馬も、過保護、独占欲……何と言われてもかまわなかった。 学校でも外でも、常に悠姫から目が離せない。 彼らにとってそれ以上に頭が痛いのは、体とは反対に、精神面、特に恋愛に関して悠姫が非常に鈍いことである。 鈍感なのか天然ボケなのか、十五になった現在も、悠姫の頭に「恋」とか「男と女」といった概念はほとんどないように見える。
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