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まだ五歳だった、はじめて会ったあの日、悠姫は蒼馬と静馬のほっぺたに無邪気にキスをした。 蒼馬も静馬も悠姫ほど可愛い女の子は見たことがなかったし、その女の子からいきなりキスされ、たった五歳だったにもかかわらず、ふたりそろって赤くなった。 悠姫はそれからもずいぶん長い間、感謝の意味を込めて、あるいは興奮したり嬉しいことがあった時、ふたりにキスをしたり頬を寄せた。 今でさえ、時折そうすることがある。 ここが日本であることも、自分がもう幼い子どもではないことも、まったく気にしていないのだ。 蒼馬も静馬も、そうされて嬉しくないと言ったら嘘になるが、この年齢になると困惑するのも事実だった。 自分たち以外には絶対そんなことはしてはいけない、誓ってするな、と何度も言い聞かせてきたからそこは安心できるものの、お前は女で俺たちは男だということをそろそろ意識してくれ、というのが、口には出せないふたりの共通の願いだった。 現時点では、たとえ好きだと言っても、 「わたしも好きだよ」 と、にこっと笑われておしまいなのである。 以前、悠姫に男には気をつけるよう注意を促したら、 「ふたりともお父さんみたい」 と、笑ってまるで相手にされなかった時には、内心がっくりと膝をついた。
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