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スーパーからの帰り道、悠姫は久しぶりにふたりの家に顔を出した。 ふたりとも持たされたペットボトルがさすがに重過ぎるようで、一度家に寄ると言い出したのだった。 悠姫がふたりの隣家に住んでいたのは両親が離婚した小学一年生までで、現在はそこから徒歩で十分ほどの場所にある、こぢんまりしたマンションに暮らしている。 母娘ふたりきりには広すぎるからと引越しを言い出された時、悠姫も双子も大泣きをした。 七歳になるかならないかの子どもたちにとって、引越しというのは「別れ」を意味する人生の一大事だったのだ。 悠姫の母から引越し先を聞き、最初に泣き止んだのは蒼馬だった。 「そこなら歩いてだって行けるよ。学校も同じだし、毎日だって遊べる」 と、ぐずぐず泣きつづける静馬と悠姫に言った。 事実その通りで、悠姫は転校もせずにすんだし、双子は毎朝悠姫のマンションまで迎えに来たし、三人はそれまでと変わらず一緒に登下校した。 中学三年になった今日まで、毎日欠かさずにだ。
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