花と風と星と～中学生編～

１

悠姫の両親は大学のキャンパスで出会い、瞬く間に恋に落ち、卒業後すぐに結婚したという。

悠姫の母は留学生で、悠姫の父は日本語を専攻する学生だった。

悠姫の母はひとりで結婚を決め、結婚すること、すでに妊娠していること、日本には帰らずこちらで暮らすことなど、一方的に両親に手紙で告げたらしい。

寝耳に水の報告に、しかもあまりに一方的過ぎる宣言に、母の両親がいい気がしなかっただろうことは、今の悠姫にはよくわかる。

いい気持ちがしないどころか、さぞ怒り、嘆き、悲しんだろう。

ひとり娘を外国に留学させることさえ渋っていたというのだから、当然である。

悠姫の母方の祖父母は、ちょっと固く、真面目すぎるきらいがあった。

はじめて彼らと対面した時、思わず怯えるように両親の後ろに隠れてしまったことを、悠姫は今も憶えている。

はじめて見る祖父母は、細身で、ぎすぎすした感じで、しかつめらしい顔をしていて怖かった。

それまでアメリカ人の中で育った悠姫には、生真面目な日本人の祖父母はことさら無表情の蝋人形のように見えた。

その後少しは馴染んだものの、あの祖父母と暮らしていたのでは、母が単身渡米することを選択した理由も納得できた。

悠姫の母は、よく言えば自由奔放、悪く言えば勝手気ままなひとだったからだ。

そんなふうにして日本にやって来た悠姫にとって一番幸運だったのは、引越してきた家の隣に、悠姫と同い年の双子、蒼馬と静馬がいたことだった。

三人はすぐに仲良くなった。

同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校に通い、現在に至る。