『始まりは』

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私は慌てて、彼に駆け寄り、ハッとした。 「!」 早瀬君の押さえた指先から、一筋の赤い線。 「~~~噛んじゃったよ・・・」 早瀬君は笑ってみせようと、努力したが、痛みを感じ、頬をひきつらせたまま、黙る。 「・・・これ、使って」 私は、制服からポケットティッシュを取り出し、数枚を彼に手渡した。 彼は受け取り、唇を覆う。 「・・・マジ最悪」 早瀬君の口から、くぐもった声で、そう言っているのが聞こえた。 「深く噛んだ?」 私が聞くと、早瀬君はハハッっと笑うように、息を吐いた。 「大丈夫。そこまでないよ」 「・・・そう」 私がホッとしたように息をつくと、彼は。 「・・・あのさぁ」 私を見上げ、言った。
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