人魚姫02

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その背中を追いかけて、どんどん薄暗い深海へと泳いでいく。 普段、皆が立ち寄りそうもない深い洞窟。 その闇の中へと入っていく。 何とかおばあちゃんの姿が確認出来る程の視界。 はっきりと周りの状況なんかは見えない。 ただ、沢山のものがあった。 見た事もないような海藻や、魚、それにおばあちゃんが造り出したモノ。 ある場所に辿り着くとその一番奥にあるビンに手を伸ばす。 そしてそれを私の目の前へと持って来た。 "これをあげる" "これは…?" "それがあれば、地上に行ける" 思わず息を呑んだ。 ビンの中には錠剤が入っている。 数はもう少なくなっていて5錠程度しか残っていないだろうか。 これで、おばあちゃんは昔人間と会っていた…? "それを飲めば人間と変わりない姿になれるから…" "おばあちゃん…" "水に入れば元に戻れる、でもねユイ" いつになく、真剣な顔をしたおばあちゃんがいた。 "どんな副作用が出るか、分からない" 何かを得る為には、何かを失う。 それは、私にも分かる事だ…。 禁忌にも近い事をしようとしている私。 それ相応の罰が下ってもおかしくない。 "一度目は良いかも知れない…でも二度目は分からない" "……" "ユイ、三度目は、絶対ないと思いなさい" 一度目は何も起こらずに済むだろう。 でも二度目はどうなるか分からない。 三度目は…ない。 一度会えるだけで良いと思っていたの。 もう一度会えるならその危険な賭けにも手を出そうって でも人は、一度満たされると欲が出てくるからいけないのかな…。 「良いよ…また、待ってて?」 これで最後だから。 だから…もう一度だけなら…。 「また、色んな所に一緒に行こうな」 「うん、楽しみにしてる」 笑顔で手を振って、昨日のように魁斗君は帰っていった。 手を、振って…。 その手を下ろそうと力を入れるけど、震えが止まらなかった。 二度目は…副作用が出る可能性もある…。 それがどんなものなのかおばあちゃんにも分からない。 でも、平気な可能性もあるんだ。 私は、 私は、彼と少しでも一緒にいられるなら。 その可能性に、縋りたい。 そう、私は あの男の子に恋をしたんだ。
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