人魚姫03

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「此処が、魁斗君の別荘…?」 目の前に立つ大きな建物。 木で出来ているお家?ログハウスみたいな。 私達の世界でも、こんな大きな建物は講堂位だよ…。 中に入ると何人かの人間がいて。 魁斗君と私の存在に気付くと笑顔で近付いて来る。 「おかえりなさい、魁斗様」 「ただいま」 「そちらの可愛いお客様は?」 「…一昨日会って、昨日遊んだ奴」 少し恥ずかしそうな顔でうつむいて話す。 「あぁ、昨日楽しそうなお顔で帰ってきたと思ったら…」 「もういいだろ!ほら、俺の部屋行くぞ!」 ぐいっと腕を引っ張られる。 "楽しそうなお顔で"…魁斗君は昨日私と遊べて楽しかった? 嬉しくて、楽しかったのは私一人じゃなかった? 確かめようと魁斗君の顔を見ると耳まで真っ赤にさせていて…。 どうしよう、嬉しい。 「魁斗君可愛い…」 「アァン!?男に可愛いって言うな!!」 照れ隠しのようにそう叫んで。 それでもくすくす笑ってしまう。だってあんな顔初めて見たんだもん。 魁斗君の新しい一面を発見していくのはとても楽しい。 螺旋状になっている階段を上がっていく。 突き当たりにある部屋が魁斗君の部屋らしい。 キィッと音を立てて開くと、白で統一された空間が広がっていた。 ひらひらと柔らかく風に舞う真っ白なカーテン。 白い清潔感のある壁。 大きな、ピッシリとセッティングされたベッド。 部屋の端に存在する小物。 魁斗君が、生活している匂い。 今目の前にいる魁斗君がもっとリアルになった気がした。 彼は此処で生活をしている。 そんな場所に連れて来てもらった事が嬉しかった。 「ほら、ベッドに横になって良いから」 「じゃあ、魁斗君も一緒ね」 「俺は良いよ」 「私が嫌だもん」 今日が最後なんだ。 ギリギリまで近くにいたい。 魁斗君と一緒にいたい…。 渋々ベッドの上に上がってごろんと横になる。 弾力のあるマットに身体を沈めて二人で目を合わせて笑った。 色んな話を聞かせてくれた。 魁斗君が普段何処に住んでるのか。 東京っていう都会に住んでるって。 此処からは凄く遠い所なんだって…。
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