人魚姫03

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ルールを教えてもらってトランプをしたりゲームをしたり。 ビデオを見てみたり。 初めて"テレビ"というものを見た時は驚いてしまったけど。 何とか怪しまれないように頑張った。 人間達はこんなものまで持ってるんだなぁって。 そんな発見も楽しかった。 「ユイ、これが俺の通ってる学校の写真」 「わー魁斗君小さい!何歳位の時?」 「小学校の入学式だったか…6歳か」 「成長してるんだねぇ」 9歳の魁斗君。 外見は私も同じぐらいだけど人魚と人間では時の流れが少し違うようだ。 中身は私の方が少し上なのかな。 それでも、魁斗君は何処となく大人っぽかった。 私と全く変わらなかった。 それ以上に、色んな事を知っていて。 尊敬すら、した。 カチカチと音を刻む時計。 だんだん日が暮れてくるのが分かる…。 魁斗君も私の表情もだんだん陰ってきて、言葉が、減っていく。 膝元の服をギュッと掴む。 嫌だよ…折角仲良くなれたのに、折角人間の男の子と会えたのに。 もう、魁斗君は此処を離れてしまう。 自然と、涙が溢れてきた。 「…泣くなよ」 「泣いてないもん…」 「嘘付け。いつも以上に顔がブスになってるぞ」 「魁斗君のバカ…」 「バカって言う方がバカなんだぞ」 「知らない…ばかぁ…」 ポタポタと雫が落ちて止まらない。 嫌だ 嫌だ 嫌だ…。 離れたくない、もっと一緒にいたい。 もっと、魁斗君と一緒にいて遊びたい…。 俯いた私の顔を上げて、魁斗君の顔が近付いて来る。 頬に触れた、唇。 ちゅっと音を立てて両方の頬に触れる。 「何…?」 「挨拶みたいなもんだ」 「……」 別れの、挨拶? 人間は皆こんな事をするのだろうか。 私も手を伸ばして魁斗君の頬を引き寄せて、同じように唇を落とす。 「また…絶対来るから」 「本当…?」 「だから泣くなよ、これ以上ブスになってどうするんだよ」 「ブスじゃないもん!」 「笑えよ」 両手を取って、その深い蒼の瞳で私を映し出す。
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