人魚姫04

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「誰だ?お前……」 「え…?」 過去のあの楽しかった記憶を共有できるって思って…。 「何で俺の名前知ってんだ?」 「え…待って、魁斗君…私の事覚えてないの…?」 「だからお前誰だよ?」 「だって…魁斗君私に…っ」 もう、頭がぐしゃぐしゃで今自分が何を喋っているのかも分からなかった。 "俺の事、忘れるなよ!" "魁斗君も忘れちゃ嫌だよ!" "俺の記憶力をなめるんじゃねぇ!" その言ったのは、貴男なのに――――…。 私を、覚えてないの…? 「魁斗のファンか何かじゃないの?」 「あーん?」 「だって魁斗有名人じゃない」 魁斗君の隣には、女の子が立っていて。 腕が、絡め合って…。 「悪ぃけど、知らない女には興味ないんでな」 「それ酷くない?折角勇気出して話し掛けたって感じだったのに…」 「いちいち相手にしてられるかよ」 足元から、崩れ去っていきそうだった。 目の前が真っ黒になって何も考えられない。 涙も、流れないまま私は何処にも進めない…。 "知らない女" 本当に…本当に魁斗君は私の事覚えてないの? 全部忘れてしまったの? あの、眩しい程の思い出を。 「魁斗君!!」 過ぎ去っていきそうな彼の腕を掴んで引き止めた。 お願い、少しで良いから。 ほんの少しで良いから私の事を思い出して。 神様、お願い…私、ずっと待ってたんだよ?魁斗君が来るのを。 魁斗君と、会えるのを。 「思い出して?9歳の頃魁斗君別荘に遊びに来てたでしょ?その時…」 「うるせぇ」 思い切り腕を振り払われて、 汚いものでも見るかのような顔で、突き放された。 「ストーカー紛れの妄想か?」 「違…本当に…っ」 「気持ち悪ぃ…」 神様。 「俺は、お前なんか知らねぇよ」 貴方はどうしてこうも。 「とっとと俺の前から消えろ」 残酷な結末を用意しているのですか――――…?
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