人魚姫06

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「やっと俺を頼ってくれるんだ」 ナビゲーター。 彼らの力は本物だ。人間界で言う"魔法使い"に似ている。 でも、魔法使いだって全能じゃない。 出来る事は限られているんだ。 その中で、最大限の事をしたい…。 もう一度、私に笑いかけてよ。 もう一度、昔のように傍にいてよ…。 立ち上がろうと、腕に力を入れた時、いきなり誰かにその腕を掴まれ持ち上げられた。 驚きよろけた身体を抱きとめられる。 広い胸に顔を押し付けるような体勢になって慌てて距離をとった。 恐る恐る顔を上げると、綺麗な男の子が目の前に立っていた。 「大丈夫か?」 「はい、ごめんなさい…」 「…何か悲しい事でもあったん?」 「え?」 「涙。」 長い指が私の涙を拭う。 綺麗に、何処か人なつっこいような笑顔でにっと口の端をつり上げて笑い、私の頭を撫でた。 ぽん、ぽん、と子供をあやすみたいに。 彼の纏うあたたかいオーラのようなものを直に感じ、 涙が出てきそうになった。 「大丈夫です…ちょっと落ち込んだけど、立ち直ったから」 「可愛い子は笑った方がええで?」 「あはは…そうだね、笑っていたい」 苦笑いして距離をとる。 この人もきっと良い人間なんだろうな。 なんとなく雰囲気で分かる。周りから好かれるタイプなんだろう。 私が人間だったら友達になりたいタイプかもしれない。 残酷な人間しかいないと聞かされ続けてきた私にとって 彼のような人は本当に貴重に思えて。 私が…人間だったら…。 「あのな、違ってたらごめんやねんけど…自分"瀧島 魁斗"って知ってる…?」 「え…?」 名前を聞くだけで私の心拍数は跳ね上がった。 「いや、俺の思い違いかもしれへんし…」 この人は魁斗君を知ってるの…? どうして私が魁斗君の事を知っているのかと思ったんだろうか。 何か接点でもあるのだろうか…。 「どうして…?」 「俺の口からは言われへんけど…なんとなく、そうなんちゃうかなぁって」 「何それ」 「さぁ、俺もよく分からへん」 そう言って、静かに笑う。 私に、何を感じ取ったというんだろうか。 魁斗君は私の事をカケラも覚えていなかった。 なのに彼は魁斗君と私の繋がりを指摘してきた。 どうして…?
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