人魚姫

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少しずつ変化してくる海の蒼色。 光が、水面に反射していて綺麗…それに泡がとても白い。 バシャッと勢い良く海面へと上がった。 肺に直接酸素を取り込んで呼吸をするのは初めての事で少しむせ返ってしまった。 「ごほっ…、はぁ…これが地上?」 眩しい世界。 私が今まで見てきたものとは全く違うモノが沢山あった。 上を見上げれば思わず目を顰めてしまう程の眩しい球体。 「あれが"タイヨウ"?」 ひらりと自由に飛び回る翼を持った白い生き物。 「あれが"トリ"?」 海の蒼さとはまた違った何処までも続く一面の青いスクリーン。 「これが…"ソラ"…」 "空"を見上げてにや~っと頬がつりあがってくるのが自分でも分かった。 凄い。 こんなの見た事ないよ。 こんなに眩しくて綺麗なもの見た事がない。 初めて見る世界にうっとりして両手をガシリと合わせた。 「地上…最ッ高…!!!」 その瞬間。 ドコッ 頭に鈍い痛み。 目がチカチカした…。 「~~~~~~~っ!?」 涙を浮かべて頭を抱える。 すぐ傍には白い球体がフワフワ浮いていた。 これ!?これが飛んできたの? 地上ではこんなにも鈍い痛みを感じるものなんだ…浮力がなあからかな。 とにかくその球体を手にとってみる。 「これって…何?」 首を傾げていると遠くから声が聞こえてきた。 「そのボールは俺のだ!返せよ!」 びっくりして振り返る。 気付かなかった。 近くはないけど遠くもない、そんな距離に陸が存在していた。 幸いこの距離では私が"人魚"だとは分からないだろう…。 それでも私は驚いてしまって固まったまま動けなかった。 「早くしろよ、そのボール持って来い」 …"ボール"ってこの白い球の事かな? って言うか何であんなに偉そうなんですか。 自分で投げたんじゃないの?しかも私の頭に直撃したんだけどそれについての謝罪は? 少しムッとしながら右手に持った白い"ボール"を見つめる。
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