退屈な日常

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大学からほど近い居酒屋のちょっとした個室。 私は今、テーブルを挟み男と女に別けられた席に座らされている。 「はいは~い!皆さん注目~! 俺は法学部の館山昇(タテヤマノボル)でぇ~す。よろしくぅ~♪」 いかにもノリだけで生きていそうな、金に近い茶髪を襟足まで伸ばし、トップを逆毛でセットしたこの男。 この男によって口火を切られたこの会。 そう 結局私は、愛華に合コンに連れて来られてしまったのだ。 退屈しのぎに来たは良いが、館山と名乗ったこの男のノリについていけない私は、それを軽く聞き流す。 すると今度は、栗色の髪を無造作にセットしたさわやかなイケメンが名乗り始める。 「つーか俺ら全員法学部だから! 最初にそれは言っただろ。あっ!俺は、西野誠(ニシノマコト)ね。よろしく」 そしてそれに続くように男たちが次々と名乗っていく。 「次俺ね!俺は田中亮太(タナカリョウタ)。現在彼女募集中です!!よろしく!」 「俺は大塚学(オオツカマナブ)。よろしく」 田中と名乗ったのはスポーツマンらしい短い黒髪をツンツンと立たせた男。 大塚と名乗ったのは、黒髪に黒縁眼鏡が“いかにも”な印象を与える男。 はしゃぐ男たちの中で、一番落ち着いた雰囲気。 よく言えば大人な雰囲気、悪く言えばガリ勉・根暗といった印象だ。 「じゃあ次は女の子自己紹介してよ!みんなは学部バラバラなんだよね?」 そんな館山の言葉も男たちの自己紹介にも興味が湧かず、私は運ばれてきたグラスの中のウーロン茶を飲む。 すると今度は愛華が男達に返す。 「私は英文科の西園寺愛華(サイオンジアイカ)。今日はよろしくね」 パチパチパチ 男たちの席から拍手と共に「愛華ちゃん可愛い!」なんて声が聞こえてくる。 はっきり言ってそのノリはどうかと思うが、そこは顔には出さずに場を繕う。 「私は愛華と同じ英文科の鈴川千尋(スズカワチヒロ)です。よろしくお願いします」 次に名乗ったのは可愛らしい花柄のワンピースに、胸元まであるハチミツ色の天然パーマをふわふわ揺らす俯きがちな女の子。 「千尋ぉ~、もう少しリラックスしてよ。私は国文科の相川めぐみ(アイカワメグミ)。よろしくね」 そんな俯きがちの千尋の肩をわざと強く叩き、次に名乗ったのは黒髪ショートカットがよく似合う、ハキハキとした印象のめぐみ。 これは、よくある大学生の合コンでのひとコマだろう。
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