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机に向かう私は、時計が気になって仕方が無かった。 1時間前、自宅には姉からの連絡があった。電話に出たのは私だ。 「今バイト終わったから帰るね」と姉は言っていた。それは毎日の習慣みたいなもので、姉はバイト先から帰宅時には必ず連絡をしてくれた。その電話の後、30分もすれば、姉は帰って来る。なのに今日は、時間になっても、過ぎても、姉は帰って来なかった。 家には私しか居ない。父子家庭で、父と姉と私だけが家族。父は仕事が忙しく、毎日夜遅く帰宅する。姉は高校二年で毎日バイトに明け暮れてる。私は中学二年で、1番に家に帰って来れるので、主に家の中を任されていた。幼い頃から同じ様な生活をしてきた為、体が時間を覚えていた。 -時間になっても、帰って来ない姉。 (…遅いな、お姉ちゃん) 教科書をめくる。机の端っこにある時計は、早く時刻む。気付けば、私は上の空だった。 時計の針が11時を指す頃、家の鍵が開く音がした。半ば驚いて椅子から飛び上がる。 玄関に行くと、下を向く姉がそこには居た。いつもなら、笑ってただいまを言う姉だが、目の前の彼女は別人のように思えた。それに…明らかに可笑しい。 「お姉ちゃん、遅かったね」 私の声は微かに上擦る。目に映る姉は、髪が乱れ、制服のシャツは汚れ、可笑しかった。…私は言葉を失った。 口を開けようとした瞬間、姉はせわしなく動き出し、私の肩にぶつかっても振り向きもせず、洗面所に入って行った。 頭が真っ白になった。玄関には、姉が脱いだ靴があらぬ方に飛んでいた。そっと、私は揃える。時計を見ると、11時をとうに過ぎていた。いつもなら姉は、9時頃には帰宅するのだか…。 その晩、私は姉と話をする事はなかった。だけども、彼女に何かが有ったことは理解せざるをえなかった。
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