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「えっと……俺は来る球、打つだけです。何か考えたら打てんなんるで」
言葉を選んでなるべく伝わるようにこう言った。
ボールを打つ瞬間のあの感覚……。
それを他者に伝えるのはとてつもなく難しい。
俺はグローブを一握りし、その感触を確かめた。
真っ直ぐ俺は皐さんを見て、その顔色を伺った。
「……ふははっ。やっぱり龍はおもろい奴や。それくらい度胸ないと四番は任せられん!」
笑い声と共に皐さんは言った。
乾いていて、軽い笑い声は耳に心地良く、和む。
「なんや龍、めっちゃ生意気やぞ」
隼人さんはそう言って一発蹴りを入れる。
「隼人さん、痛いですよ」
「龍のばぁーか」
そんな会話をしていると、自然に笑顔が溢れた。
「隼人いい加減にしろよ。潤を見てみ。静かに集中しとるやろ」
皐さんはうつ向いている潤を指差し、見習えと言った。
「いや、立ったまま寝てますケド……」
俺は潤の顔を覗きこんで二人に報告する。
先輩たちは潤の大物っぷりに声が出なかった。
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