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「龍ー!!」
「ようやったぞ、龍!!」
先輩たちが俺を取り囲んで何回もハイタッチをせがむ。
「お前には負けるよ」
呆れたようで、しかし安堵した笑みを浮かべるキャプテンの皐さん。
「良いとこばっか持っていきやがって!」
一番に俺に抱きついたきた隼人さんは毒づきながらこずいてくる。
しかしその瞳は嬉しさで一杯で輝いていた。
「龍、甲子園でもヨロシクな!」
同級生の潤には拳をぶつけ合ってその喜びを分かち合う。
帝徳の選手たちは口を開けたまま立ち尽くしていた。
「……勝ったんや」
俺はそこにきて初めて分かった。
やっと状況が飲み込めて実感が湧いてきたのだ。
九回の裏、逆転満塁サヨナラホームラン。
打者にとって一番嬉しい終わり方だった。
「マジで、甲子園行けるんすか!?」
俺は満面の笑顔で囲んでいる人たちに言った。
「あたりめーだ!」
隼人さんはかなり俺の頭をこずいてくる。
「隼人さん、痛いですよ」
「お前が余りにも馬鹿な発言するから、これくらい当然や」
隼人さんの毒舌も今日は柔らかく響いて耳に届いた。
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