22人が本棚に入れています
本棚に追加
整列をしているとやかましいくらいのサイレンが聞こえた。
礼をして前にいた先程まで戦っていた選手たちと握手する。
「今川……絶対勝ち上がれよ」
涙で詰まらせた声を精一杯振り絞った、そんな印象をうけた。
「はい!」
俺は素直に頷いた。
――翌日の新聞には県立西高校地区予選優勝の文字が踊った。
そしてカラー写真には最後にホームランを打った自分の姿があった。
そして知らない間にその評判は雑誌やテレビに取り上げられていた。
『西日本最強の打者今川龍一。西の龍』
いつしかそんな歌い文句と共に俺の名前は全国に知れ渡っていった。
「龍、お前スゲーよ」
潤とキャチボール中にもフェンス越しにカメラのシャッター音が止まらない。
記者はもちろん、同じ学校の人間に他校の生徒……。
「なんか本当、嫌になる。」
ここまで来て正直うんざりしていた俺は溜め息をつく。
「まぁな。あと十分我慢や。その後は非公開になるんやろ」
潤は苦笑いしながらボールを返してきた。
黒いグローブでそれを受け取り、軽く白い球を触ってみる。
最初のコメントを投稿しよう!