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このボール一つに一生懸命になる野球というゲームにひどく面白味を感じた。
どうして自分はこんなにもこの野球に執着し、打ち込んでいるんだろう、と。
「龍?」
しばらくしても投げ返さない少年に疑問を感じた潤が声を掛けてきた。
「あ、ごめん」
思い込みに浸っていた事を少し恥ずかしく思って慌ててボールを返した。
「お前らー、ちょっと来い」
「皐さんだ!」
バックネットの前で皐さんが俺らを呼んでいた。
隣に監督が立っている。
直ぐに駆け足でそこへ向かった。
練習中の敷地内に入れない人々はフェンス越しに非難の声を上げる。
それを黙殺し、俺と潤はバックネットに向かった。
「揃ったな」
皐さんがそう言ったら、加瀬(かせ)監督が口を開く。
「本戦まであと十日だ。今川、あのギャラリーをどう思う?」
監督の問いは俺にとってかなり意外なものだった。
今集まっている自分という存在を持ち上げようとする人々。
それは自然に俺をスターとして作っていた。
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