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「正直に言うなら……うっとうしいです」
それは自分の中、一番下にある本音。
「そうやな。お前を何かのスターにでもしようとしている」
監督の言う事は全て当たっていた。
――そうやった。
突然現れた人々は本当の自分なんて知らずに、ただ何処かのスターを見るように接してくる。
知らない者までも、好奇の目で自分を見てきた。
そして自分を見失いかけていた事を監督の言葉から諭った。
俺はこんな騒ぎ立てられる為や、目立ってテレビや雑誌に取り上げられるような人間ではない。
ただ、甲子園で……野球の聖地と呼ばれる場所で最高のプレーをする為に野球をするのだ。
この初老の監督はかつて自らも甲子園に行った事があったという。
ピッチャーとして、ベスト8まで残ったと誰かが言っていた。
監督の言葉はすんなりと俺の心に染み渡った。
「……監督、ありがとうございます」
監督の厳しい顔を見据えて、俺はこう言った。
「俺、気づきました。こんなんやあかんって」
監督はその目を見て、やはり二年で四番につくだけの精神を持っている、と後になって言ってきた。
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