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「肝が座ったな……」
ふっと息を吐いて監督は静かに俺に言った。
厳しい面持ちは少し柔らかくなり、にやりと笑った口元は挑戦的になる。
「お前が気付いたんなら三年の奴らは大丈夫や。今年、ひと風吹かせようやないか。そうだろ?」
「「はい!!」」
集まっていた先輩たちがにこやかに笑って返事をした。
俺はこの時、加瀬監督だからこそついていこうと思いを固めた。
挑戦的な表情で選手よりも甲子園に対して燃えている……そんな印象を受けたからだ。
「はい!」
俺も監督や先輩に煽られて自信げに返事をする。
もう先輩たちは甲子園の舞台で活躍する自分たちの姿が浮かんでいるようだった。
「すまんかったな。ギャラリーは気にせんで練習せえ」
腕組みした監督はギャラリーをひと睨みし、威嚇する。
俺はその姿に滑稽さを見い出して笑いそうになったが何とか押し留めた。
「……失礼します」
俺は最後にそう言って、監督の前からもといた場所に小走りで帰って行く。
「潤、さっきの続きしよーぜ」
隣にいた潤にこう言うと、あいつも笑ってOKを出した。
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