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いつも一番に部室に来るのは俺やった。
鼻歌混じりに練習着に着替え、綺麗に手入れされたグローブを持ってグランドに向かう。
まだ誰も来ていないグランドに最初に足を踏み入れる事が何より俺は好きやった。
運動場の土をスパイクで踏みしめる。
この感触を感じて俺はいつも自然と笑みを溢した。
使い込まれた愛着のある黒いグローブを脇に挟んで、小走りで道具を準備にかかった。
夏特有の青い空に純白の雲は映えてとても美しく、太陽の照りつける暑さに汗も流れる。
木陰からは煩く耳を突いてくる蝉の鳴き声にも慣れてきた所で俺は道具室のドアを開けた。
この季節のものはみんな好きなものだ。
そればかり詰まっている事に何故か喜びを感じる。
俺の名前は今川龍一(いまがわ りゅういち)。
都心からは遠く離れた田舎にある県立高校の野球部員だった。
「今日もええ天気やなー」
俺はやんわりと呟いて伸びをする。
どちらかと言えばがっちりとした体で背が高い。
柔道部とよく間違われたりするんよね。
俺の得意な事はボールを守備の誰も届かない場所に打ち返す事。
球を見分け、瞬時に判断する能力に長けている……とか言われるけど、いまいち考えてないんが本音やな。
俺の通っているこの田舎の県立高校にもまた夏が巡ってきた。
明日はいよいよ地区予選大会の決勝。
ここまで勝ちのこったのは皆が一丸となった成果やっていつも思っとる。
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