22人が本棚に入れています
本棚に追加
「――龍、潤今日も早いな」
先程の潤と同じように後ろから聞きなれた声を耳にする。
「あ、皐さん!」
俺は思わずその少年の名前を叫んだ。
その後、潤と一緒に帽子を取って挨拶する。
部室から出てきた所だったらしくはにかみながらその人は手を上げて挨拶を返した。
片手にバットを持っていて、もう片方には手袋を握っている。
「二人とも今日は自習練なんやから、あんまり飛ばすなよ?」
そう言って笑うのは賀山皐(かやまさつき)さん。
西高野球部のキャプテンであり、性格も温厚でチームメイトからの信頼も厚い存在だった。
彼はそれだけではなく、セカンドというポジションでは華麗なボールさばきで龍一と共に注目されていた。
「はい。先輩、グランド使いますよね?」
今準備をしている塁を見ながら一応確認した。
「おう。多分隼人や大介も使うやろ」
ちらっと部室を振り返って皐さんは頷く。
「先輩はティーバッティングですか?」
「そう。もうすぐあいつら来るかな」
皐さんはそう言って部室を見た。
どうやら準備の遅い先輩を置いて来たらしく、その人が気になるらしい。
「皐ぃー、お前早すぎやで」
続いて部室から現れたのは小柄な少年。
「そうか? 隼人がおせぇんだよ」
服も半分着そこなってシャツが見えている。
そんな事にも気にしないでにこにこと皐さんは笑った。
最初のコメントを投稿しよう!