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「嘘じゃ。……つか龍も潤もいんのかよ」
ちぇっ、と舌打ちして真柴隼人(ましば はやと)こと隼人さんは部室から出てくる。
細身の身体に小さな身長だけど、人一倍口悪いので有名。
この部活の一番打者かつポジションはサードでチーム一の俊足の先輩やな。
本当に毒舌でドがつくくらいS気があるって噂があるっけ。
「いよいよ明日か」
皐はふっと呟いた。
その瞳は空の青を写し、綺麗に輝いている。
明日勝てば甲子園。
考えなくても自然とその言葉がちらつく。
そしてそれは心なしか緊張を誘い、身を引き締めた。
「相手はあの帝徳や。気ぃ抜いたら俺ら食われてしまう」
珍しく隼人さんは真面目な顔を作って言った。
去年の地区予選の覇者であり、本選のベスト16でもある帝徳学園となれば自然に意識してしまうらしい。
「ピッチャーは打たせてとるタイプと剛腕の対照的な二人。龍としてはどうや?」
皐さんは真剣な面持ちで俺にどうかを尋ねた。
俺としては正直言うて何も考えてなかったんやけど。
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