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「あなた。その銃は・・・」
何か告げようとした少女を男が制す。
「まぁ待て紗耶香」
そしてこちらに向き直った。
「どこから説明したらいいんだ? ・・・俺達は、ある男から身内の人格を取り戻してくれと依頼されててな。なんでも、甥の人格が・・・いや、それはあんたに関係ないな」
とにかくその依頼を受けようとしたらこの世界に飛ばされたんだ」
「訳分からないって顔してるな。
まぁ俺達も理解してないがね。
・・・その銃を返してくれるか。
言っておくが」
男はいきなり自分の左腕に切りかかる。
燃えるような鮮血が飛び散ると共に、男の腕は地面に吸い寄せられるようにボトリと乾いた音を滲ませ転げ落ちた。
生々しい肉塊が切り取られた男の腕から覗いていた。
無防備にさらけ出された肉の塊は、初めて大気に触れた溶岩のように膨らみ盛り上がると、男の左腕を形どるように溢れ出した。
その肉塊は完全に男の左腕を形どると、そこから再び男の腕を再生させていく。
信じられない現象を目の前にし茫然自失とする。
その僅かな隙に、男は俺の懐に飛び込んでいた。
再び首筋にあてられた白刃に冷や汗が出る。
「俺は死なないからな」
発せられた男の声は無機質な機械のように感じられた。
「別に返さなくていいわよ」
横からの少女の声に男はすっとんきょんな声をあげる。
「なんで?」
「だってあれ弾入ってないもの」
ポケットから弾丸を取り出す少女。
「それ先言えよ」
「さっき言おうとしたのを遮ったのはあなたでしょ」
二人の会話に軽い立ちくらみがした。
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