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それは、残業のせいで途中で終電が無くなり、降りたことのない寂れた駅で降りたときのことです。
給料日前で金がなかった私はタクシーを拾うことをできず自分の家のおおよその方角に向かって歩いていました。
ところが、夜中の二時を回った頃急に原を壊してしまい、慌てて通りがかった公園のトイレに駆け込むハメに…
そしてようやく一息つけたとき隣の個室に誰か入っていたことに気がつきました。
隣の男性はどうやら個室の中で電話をしているので声が漏れて聞こえてきます。
「ん?うん、分かってるって。あはは!あ、ごめんごめん何?」
『……なった……いつか』
「ああ、そうだな。大丈夫だって。気にするなよ。え?おう。あはは!やだよ。うん、そうなの?」
『たしか……かけ…し……』
流石に相手の声までは聞こえませんでしたが辺りは静まり返っていて、まるで自分の耳元で話しているくらい声が聞こえてきます。
「そうだっけ?おう…あ、そうかもしんね、わり!ちょっと待ってて」
と隣の男が煙草に火をつけ始めたとき
一瞬の無音の間をぬって電話の相手の声が聞こえてきました。
『お掛けになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上掛けなおしてください。お掛けになった電話番号は…』
「もしもし?わり。煙草。でなんだっけ?あぁ、そらゃおまえ…」
私は慌ててトイレを掛け出て駅前で震えながらシャッターが開くのを待っていた。
ただものすごく気味が悪くて怖かった。
思い出すとまだ夜が怖い。
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