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抱きしめられた栄口。
あの後、その相手が巣山だってわかっても、俺のモヤモヤは消えなかった。
だって。
俺だって栄口のこと。
「……好きだったのに」
「は?」
怪訝そうな声にはっとして顔をあげると、泉が思いっきり顔をしかめてる。
しまった。
慌てて口を押さえてみるも、当たり前だけど無駄だった。
引き攣った顔を隠そうともせずに、一瞬にして俺から離れる泉。
「お、おまえっ、お、お俺のことをそんな目でっ」
「ちょっ、ちがっ、」
「うわー!!近寄んな!」
「泉っ!って、わわっ!」
わざとらしくおびえる泉を黙らせようと体を乗り出した俺は、自分の持っていたトンボに足をかけて勢いよく転んでしまった。
痛い。なんで俺ばっかこんな……。
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