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…雪 まだ残りし山村に
架かりし小さな橋ひとつ
誰が名付けた 美紙橋
想いを込めし 短冊を
川面に投げて 祈りしは
愛しき人の 無事なる姿
涙ながらに語りし老女
昔々の戦(いくさ)場に
愛する人は 旅立ちぬ
最後の別れは 美紙橋
「必ず帰ってきます」との
言葉残して 勇ましく
南へ向かう その姿
帰らぬ人へ 想いを寄せて
流す短冊 幾百か
川面を埋めし 短冊は
南の島へは 届かない
沈みしずみて 川の底
いつか終わりし あの戦
帰ってくると 信じつつ
朝 夕かよう 美紙橋
月日は無情に 流れゆき
想いのたけは ますばかり
いつしか娘も 歳をとり
戦の記憶も 薄れゆく
残りしものは 愛の影
今なを浮かぶ あの笑顔
涙の老女が にこりと笑う
生きてる事が素晴らしい
楽しい事が支えなら
苦しい事も また支え
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