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「振り向けない?」
「はい。」
「それは、自分の過去をって事ですか?」
「違います先生!物理的に、今現在の自分自身の後ろを振り向けないって事です!」
「つまり………振り向けない。」
「助けて下さい先生!」
「でも、いったいなぜ振り向けないんです?」
「だって先生!もし僕が振り向いて、そこには世界が存在していなくて、そこは真っ暗な空間で、何もない世界だったとしたら!!」
「ちょっと落ち着きなさい。そう言った不安は、誰の心にもあるもんです。大丈夫です。ちゃんと、あなたの後ろには世界が存在していますよ。」
「なぜ、先生に世界の存在が分かるんですか?」
「なぜって、私の目にはあなたの後ろにある風景がはっきりと見えるからですよ。窓の外の公園で遊ぶ子供達の姿がね。」
「先生?でも、もし先生も僕が創り出した世界の人間だとしたら?先生は、僕に対してストレスを与える事なんて言わない。」
「だったら、君が部屋を出て行けば私も消えるんですか?」
「消えます!」
「……まあ、騙されたと思って振り向いてみなさい。」
「騙されませんよ!」
「えっ?」
「だって先生?先生の瞳には、僕の後ろの世界が映っていないからですよ。」
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