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「……さん!」
「ベネットさん!」
甲高い声に気付いて目を覚ますと、心配そうに私の顔を覗き込む少年が居た。少年の名はダーム。数ヶ月前から共に旅をする事になった仲間で、明るく心の優しい子だ。
彼は、私が寝ていたベッドに両手をつくと、その蒼い瞳で私の目をじっと見つめる。疑う事を知らない無垢な瞳。吸い込まれる様な蒼……見つめられると、何故か落ち着く。
「ベネットさん大丈夫? かなり、うなされていたみたいだけど……」
起き抜けで上手く頭の回らない私は、その透き通る眼差しに見つめられたまま、彼に返す言葉を模索する。
彼を悲しませたくは無い。
だからと言って、明らかな嘘も吐きたく無い。
暫く考えた後、私は彼に告げる。
「悪い夢を見てしまっただけだ」
と――
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