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そう、あれは悪い夢。
遠い昔に置いてきた筈の悪夢。
もう、思い出す事は無いと思っていた昔の話。
その様な事を考えながら、私は心配を掛けさせまいと、出来うる限りの笑顔を浮かべる。だが、その笑顔はどこか不自然だったのか、彼は蒼い瞳を微かに潤ませ、頬を赤らめた。
「それなら、いいけど……でも、何だか苦しそうだったし、凄く汗もかいているみたいだし……」
何か……何か、彼を安心させる言葉は無いだろうか?
ただ誤魔化すだけでは、彼は納得しないだろう。
この為、私は
「それは、単に寝苦しかっただけだろう」
と、まるで何事も無かったかの様に彼へ告げる。
涼しくは無い気候であるし、これは無難な答えだろう。それに、この場を離れる理由も出来る。頭をすっきりさせる為、浴室へ向かうと言えば良いのだから。
浴室で汗を流してくるとダームへ告げ、私は彼の前から足早に立ち去った。
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